戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)次世代海洋資源調査技術 (海のジパング計画)

活動報告

第一回東京海洋大学SIPワークショップ 開催報告

東京海洋大学が参画するSIP(Cross-ministeral Strategic Innovation Promotion Program)、戦略的イノベーション創造プログラム、のひとつである「次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)」)の一環として、2月29日から3月4日のあいだ本学でワークショップが開催されました。「次世代海洋資源調査技術」における東京海洋大学の役割は、持続可能な海洋資源開発を行うことができる新海洋産業創出に向けた国際・国内法体系ならびに社会経済的影響評価と合意形成過程の実施要綱を提示することであり(目的)、ワークショップでは、海底石油資源開発の先進国であるスコットランドとノルウェーから研究者を招き、それぞれの国の事例をもとに我が国の今後の方向性を探りました。

スコットランドからはロバート・ゴードン大学で環境社会学の教鞭をとるレズリー・メイボン博士が、ノルウェーからは油田開発に揺れるロフォーテン地域のコンサルタント会社、SALTの事業部長であるシャスティ・ブッシュ博士が来日しました。レズリー・メイボン博士は、国際交流基金の特別研究員として2014年に6週間滞在し、震災後の福島で現地調査を行うなど東京海洋大学と研究協力を行っています。ブッシュ博士の所属するSALTは一昨年、在日ノルウェー大使館で行われた海洋セミナーにも参加しており、日本との協働に力を入れています。

ワークショップは29日(月)、午後便で羽田に着いたブッシュ博士の到着を待って、夕方からお弁当を食べながらの自己紹介やSIPとプロジェクトにおける海洋大の役割等の説明といった非公式ミーティングから始まりました。翌日3月1日(火)は、今回のテーマでもある社会経済評価(Social Impact Assessment、SIA)の概念をスタッフ間で共有したのち、メイボン博士とブッシュ博士からそれぞれの事例を紹介していただきました。

メイボン博士のお話

スコットランド北東部に位置するアバディーンは1970年代の北海油田の開発に伴い、社会・経済ともに急激な変化を遂げた都市である。近年の石油価格下落で地域経済は大きなダメージを受けており、風力や潮汐発電といった再生エネルギー産業への転換への試みが考えられている。老朽化した油田への二酸化炭素の海底隔離プロジェクト等もふくめ、SIAの重要性が指摘されている。

ブッシュ博士のお話

北ノルウェー、ロフォーテン地域は昔から漁業が盛んで、海底資源開発に対する反発が大きい。インパクトアセスメントという言葉を使わず知識集積という形でアセスメントを行っており、石油・エネルギー省がそれらを報告書にまとめている。国会で開発を承認すると開発にむけて改めてインパクトアセスメントを行う手続きをとる。現政権(~2017年)ではインパクトアセスメントは行わないとのこと

これらの事例から日本の海底資源開発に伴うリスクや問題点を抽出し、翌々日の3日(木)に予定されている国際セミナーの進め方や中心となるテーマについて話し合いました。室内での議論の後は、東京海洋大学の主要な活動である江戸前ESD協議会による東京湾の巡検を行い、冷たい風の吹く海上から暮れゆく東京湾岸を視察しました。

ワークショップのメインである3日(木)の国際セミナーは、環境影響評価実務に就く方々27名を招いて楽水会館の大会議室で行われました。ここでは、参加者に四色のポストイット・ペンと模造紙が用意された6つのテーブルに分かれて座ってもらい、メイボン博士とブッシュ博士の講演の内容について各テーブルで議論してもらうという参加型ワークショップの形式をとりました。参加型ワークショップに慣れていない参加者のなかにはこういった形式のセミナーに戸惑いもみられ、また、逐次通訳を介しての講演・質疑応答で通常の2倍の時間がかかり、議論を十分に深める時間がなかったとの声もありましたが、全体的には有意義なセミナーであったとの評価を多数の参加者からいただきました。海洋資源開発にともなう社会経済リスクをテーマとした初めての国際セミナーであったため、具体的な結論には至らなかったものの、今後の議論の基盤を作ることができました。

ワークショップの最終日には前日の国際セミナーの振り返りと今後のネットワーク構築について意見交換を行いました。国際セミナーについてメイボン博士からは、各テーブルでファシリテイターを務めたスタッフの専門分野・立場が多彩にわたること、分野間研究協力の難しさが指摘される中、海洋大では多分野にわたるスタッフの協力体制が確立していることのコメントをいただきました。セミナー準備時点での反省点、セミナー結果のとりまとめ等について話し合ったのち、学生インターンシップの可能性や論文共同執筆、今後ともスコットランド、ノルウェーとの連携を深めていくことを確認して1週間のワークショップを終えました。

セミナーの様子


テーブルで議論

講演者に質問

ポストイットで意見をまとめる

結果を発表

文責:笠島克恵

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