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HOME > 講義・ワークショップ > 講義・ワークショップ等の報告 > 第8回「高度専門キャリア形成論Ⅰ・Ⅱ」の講義報告です

講義・ワークショップ講義・ワークショップ等の報告

第8回「高度専門キャリア形成論Ⅰ・Ⅱ」の講義報告です

2014年01月28日

◆平成26年1月23日(木)、品川キャンパス白鷹館2Fに於いて第8回高度専門キャリア形成論が開催されました。
今回は、『企業の研究所で活躍する若き博士たち』と題して、3名の方々に交代でご講演いただきました。
講義、ワークショップおよび懇談会の三部構成のイベントは、瀬川先生の司会進行で恙なく進行しました。

※ワークショップおよびキャリア懇談会については、別途報告をご覧ください。

最初に、キャリア開発室長の小川先生から挨拶があり、学生の皆さん、企業および研究機関の方々にたくさんお集まりいただいたことへのお礼が述べられました。

小川先生は、修士の頃に「博士を取っても就職は無い、博士号は取ろうと思えばいつでも取れる。」と言われて就職したが、実際に就職してみたら非常に大変で、学位を取るのは容易ではないと分かったそうです。実際にインターンシップをやった人は、大学で学ぶことや学会で発表するだけでは、社会に出て通用しないことを身に染みて分かったと思うと話されました。そして、「今日のような機会を、貴重なお話を伺うことができる有意義な時間にして欲しい。様々な人生が聞けることを、楽しみにしている。」と、発表に対する期待を述べられました。

引き続いて、第1部の「高度専門キャリア形成論」の講義が開始されました。

◆瀬川先生から日本水産(株)の熊倉氏の紹介が有り、「博士号取得者が取り組む養殖技術開発」と題して最初のご講演をいただきました。

熊倉氏は、学位取得後にできるだけ早いうちにアメリカに行くようにと吉崎先生にアドバイスされ、実際にテキサス工科大学およびイースタンニューメキシコ大学でポスドクを経験されました。しかし、4~5年経つと、やはり日本で仕事がしたいと思うようになり、日本で大学の教員職を探しましたが、実績も経験も無いために全く就職先が見つからなかったそうです。このままでは無職になると焦っていた時期に、ニッスイが研究員を探しているという情報があり、背に腹は代えられず企業への就職を決意したという経緯が紹介されました。

続いて、ニッスイの会社紹介がありました。水産業界の中ではR&D(研究・開発)に特に力を入れている企業だそうです。熊倉氏は、今は大分海洋研究センターでブリの早期天然種苗に関して研究しており、企業としての利点等に関連付けてその概要の説明がありました。

熊倉氏は、民間企業で研究をすることに関連して、「ニーズとシーズ」について、「ニーズとは現場が求めている技術であり、シーズとは将来の種は現場に落ちているということであり、どうやったらこの問題を解決できるのかを考える必要がある。」と話されました。

自分の専門で仕事ができていれば良いが、もしそうでなければ、違う人に話を聞いたり、自分で勉強する等の努力が必要だと説明されていました。また、企業で研究するときは費用対効果も考えなければならない。更に、企業のアウトプットは利益であり、どうすれば関連する部署に利益を還元できるか、或いはどうすればお客様に良いものを提供できるか等も同時に考える必要があると説明されました。

企業では、研究開発の先にお客様や現場の方々の顔が浮かび易い。「現場の人に有難うと言われ、美味しいものを作っていただいたと言われることが大事だと思う。今は、企業での研究が面白く、ヤリガイがあると感じている。」と述べて講義を締め括られました。
 

◆次に、瀬川先生から(公)海生研の高田氏の紹介があり、「海洋調査及び研究活動を通して培ってきたもの」と題してご講演いただきました。

海生研は当初、火力発電所の温排水が漁場環境への影響を調査・分析する機関として設立され、現在では原発等の海洋環境放射能モニタリングも文科省からの委託事業として請け負っていると紹介がありました。

現在、高田氏は、原子力規制庁からの委託で帯域環境調査に携わっており、調査機関で資料を採取・分析してもらい、上がってきたデータを海生研が取り纏めて報告しているそうです。データを上げる時の問題点や疑問点について、科学的根拠に基づいて説明する等の仕事を担当しており、更に研究課題の提案等に結び付ける活動もしていると紹介がありました。

海生研では専門的な知識・技術を持った人材が必要であり、学位又は技術士を持っている人が4割程いるそうです。高田氏自身は放射能が専門ではありませんでしたが、博士課程で学んだ研究をするためのスキル等が役に立ち、たった2年で現在の研究に携わることができたと説明されていました。

当初は、高田氏も専門を活かした仕事に就きたかったが、専門とは違う(独)放射線医学総合研究所でポスドクをすることになったそうです。そこでは、業績(論文)を上げないといけないが、一旦業績が出れば次の提案をする機会を与えて貰え、大変だったが次第に楽しいと感じるようになったと話されました。

海生研に入社後も、ルーチワークしかやらないのではなく、世界が注目する膨大なデータに着目し、世界に発信できるデータにしようと考えるようになったそうです。放射能は分からなかったが、海洋データの取り纏め方法は分かっていたので、少しでも見易く分かり易い表にするように工夫することができたと説明されていました。

大学院では、専門知識の獲得方法、研究へのアプローチの仕方、そして論文の書き方等を学ぶことができる。「たとえ、分野が変わっても直ぐに対応することができる。また、そのことにより、新たな研究テーマが創出されることが重要だ。」と述べて講演を締め括られました。
 

◆続いて、瀬川先生からキユーピー(株)の有泉氏の紹介があり、「天職(Calling)は用意があるからCallされる」と題してご講演いただきました。

キユーピー社は、「楽業皆悦」の社是からも分かるように、人を大事にしていこうという会社であり、実は調味料の事業は売り上げの25%程度だそうです。これは、ある事業が発展していくときに、その裾野を広げるように他の関連する事業にも展開していく形態をとっているからだと説明がありました。

有泉氏は、もともと微生物の勉強をしたので、入社時は微生物研究所に配属になったが、偶然にも隣の部署でマヨネーズの開発をしていたことから、コレステロール抜きのマヨネーズの開発に携わることができたと経歴の紹介がありました。

やがて、社内で3人のメンターに恵まれ、「マネージメント」、「モチベーション」、そして「研究の基本」を教わる機会を得たことで、次第に会社にも貢献できるようになり、現在は研究と言うよりは、研究開発はどうあるべきかを考えているそうです。また、日本では修士でもなんとかなるが、世界に通用する技術を考えた場合には博士が必要と強く感じ、京都大学の博士後期課程で学び始めたと紹介がありました。

自分の18年間を振り返えると、配属された先々で一生懸命に仕事をしていると、予期しない出来事(異動等)があったそうです。「ジョハリの窓」を引用して、「自分が自分をどう思っているか」よりも、「他の人が思っている自分」に対して窓が開かれていくことを皆さんに一番伝えたいと述べられました。「深く掘るには幅がいる」(土光敏夫)の言葉のように、専門だけではなく、専門を掘る過程で見つけた横の領域にもどんどん広げて行くからこそ本物の宝がみつかるとも話されました。

最後に、「天職の定義とは、先天的、または後天的に見出した、その人が使命だと信じられる職業であり、先天的に決まっている職業のことではないと思っている。また、やっていくうちに、次第に見出していくものが天職なのではないだろうか。」と述べられました。「博士を取った人は、自分の専門を活かして行こうと思っていると思うが、キャリアの成功とは『天職に就き、その使命を全うすること』ではないか。」と述べて講義を締め括られました。

【Q/A】
グローバルなフィールドで活躍する技術者に必要なことは何か?
日本では前提条件が決まっているが、海外では地域、文化、環境が違う。原点に遡って広い視野で考える等の、今までとは違うことを求められるのではないだろうか。新しいチャンスには、どんどん飛び込む姿勢がグローバルの環境では必要ではないかと思う。 

以上

 

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