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講義・ワークショップ講義・ワークショップ等の報告

第11回「高度専門キャリア形成論Ⅰ・Ⅱ」の講義報告です(H26年度)

2015年03月03日

平成27年2月26日(木)、品川キャンパス・2号館100Aで、平成26年度第11回高度専門キャリア形成論が開催されました。


『 大学・公的研究機関の水産研究で活躍する博士たち 』
  土井 航 氏 博士(海洋科学)
   東海大学海洋学部水産学科 講師
  今村 伸太朗 氏  博士(水産学)
   (独)水産総合研究センター中央水産研究所 研究員

 2015-02-26_161820(1) (576x205).jpg

初めに、司会進行役の塩谷特任教授から本日の講義趣旨について説明がありました。

続いて、土井氏の登壇となりました。


IMG_0197 (144x144).jpg公設試や環境アセスメントに関わる仕事に就きたいと思い、資源育成学科で水生動物の生態や水産資源の変動等を研究した。現職の前には、1年間のポスドクや水産総合研究センターで研究員を経験している。

日本海で調査船に乗っているとき、知人から東海大学で公募があることを教えてもらった。船の上で応募書類を作成し、下船したら直ぐに投函した。過去に応募した書類等を利用して、いつどこでも応募書類を作成できるように準備しておくことが必要だと感じた。また、応募する意志を周囲の人たちに知っておいてもらうことも大事だ。応募に際しては、所属している職場の長に事前説明しておくことが必要だろう。


私立大学は国立大学よりも授業数が多く、たくさんの学部生と少数の大学院生を持つことになる。専門に関しては、駿河湾等の中部地方のフィールドや西表島の大学施設等で甲殻類の資源や生態の研究をしている。また、大学のオープンキャンパスや一般人向けの講義をすることもあり、小中高の生徒とその父母に接する機会も多い。1年のうちでは、3月に一番時間の余裕が有り、この間に論文を書いている。


前職では、クロマグロの産卵に関する調査航海を実施することが仕事であり、用途は限られていたが必要な研究費は与えられた。個人的な興味による研究も何とかできる。様々な分野の研究者や調査船の乗組員との仕事は非常に勉強になり、研究以外の仕事もたくさんあった。独法の研究者は、異動によって全く異なる研究対象に変わることもあり、それでも良いと思う人には向いているだろう。


IMG_0203 (144x144).jpg大学院生は、今の環境に感謝して研究に打ち込んで欲しい。研究を一生懸命できるのは大学院の時しかなく、一生懸命やったことは将来必ず役に立つ。また、ポスドクの方には、就職は偶然の要素も少なくないことを知ってほしい。業績は当然だが、公募では色々な要素によって僅かな差で順位が決まってしまう。論文をたくさん出すことは有効であり、少ないチャンスをものにすることができる。

最後に、なるべくたくさんの論文を書きましょうと述べて講演を締め括られました。

次に、今村氏の登壇となりました。


IMG_0209 (144x144).jpg現在は、冷凍水産物の解凍後の消費期限を延長する技術や、水産物の安全性について研究している。大学院の頃は、指導教員から「魚特有の生命現象を解明する研究をするように」と何度も言われた。連携大学院制度を利用して、中央水研でゼブラフィッシュの分子生物学について博士研究を行う機会を得た。ゼブラフィッシュは、体の中で起こることを目で見て知ることができることに感動した。この技術を使って自分にしかできない研究をしたいと思うようになり、これが研究者を目指すきっかけとなった。


博士課程終了間際に、指導教員が米国留学を勧めてくれた。私がいたハーバード大学医学部のダナ・ファーバ癌研究所には、ノーベル賞受賞者がたくさんいる。研究が活発で、皆がやる気に満ち溢れた環境で研究ができるのは幸せだと感じた。魚を使って、生物に共通する老化のメカニズムの研究をしたが、英語が全く喋れなかったので、留学直後は研究者の中で孤立してしまった。しかし、医学部で働いている人は魚のことを知らないので、自分の分かることを説明したところ、皆に溶け込むことができた。自分の強みをアピールすることが、知らないところでやっていくためには大事だと感じた。


IMG_0212 (144x144).jpg留学中の給料は非常に低く、また3か月ごとに研究成果を評価される等の不安もあった。ビザの関係で、3年後には帰国することに決めた。正社員を目指したが、帰国が迫ってもなかなか就職先が決まらなかった。結局、中央水研で1年間のポスドクをすることになった。偶然にも、中央水研のテニュアトラックに応募したところ運よく採用された。このとき、恩師との繋がりが大事だと思った。

リスクを負っても海外留学するのは、日本では得られない経験があるからであり、あえて外に出ることで可能性も広がる。自分の可能性を信じて、素晴らしい環境で研究だけに集中した期間はとても充実していた。留学中に得た研究に対する考え方や技術、研究姿勢等は現在の研究にも役立っており、日本で会うことができない優秀な研究者に出会う機会も格段に多い。英語が喋れないことはただ単に不便なだけであり、仕事を通じて気持ちは通じ合うことができる。

「本当に自分の信じた研究は、学生の間と留学していた間にしかできない。就職したら、自分が納得できない研究もしなければならないことも多いので、ぜひ今を大切にしてほしい」と述べて講演が締め括られました。

続いて、質疑応答に移りました。

質問①:英語による海外投稿へのアドバイスはあるか?
それぞれの専門分野で、ネイティブの人が書いた論文を沢山読むことが参考になるだろう。
質問②:偶然のチャンスを引き寄せるために心掛けていたことや行動はあるか?
楽な選択肢よりも、難しい選択肢を選ぶように心掛けていた。留学は私の中でも最も難しい選択肢だった。(今村氏)
船に乗る機会を与えてくれた先生方と、そして専門以外にもチャレンジしたことがキャリアをうまく繋ぐきっかけになったと考えている。(土井氏)
質問③:博士課程を修了した時点で論文はどの位書いたか?
トップオーサーの論文は2~3本だったと記憶している(土井氏)
質問④:自分にしかできない研究がしたいと思った時の心境は?
特に水産の分野は、まだ研究されていない現象がたくさんある。本当に研究ができる人は、何処を研究したら良いかを考えながら研究している。これはすごく大切なことだ。(今村氏)
質問⑤:ハーバード大学留学時代の研究を支えた奥さんについて何かエピソードはあるか?
留学が決まってから入籍し、一緒にアメリカに行って、同じ研究室で一緒に研究した。一人で留学するのはものすごく不安だが、二人だと精神的にも非常に安定することができた。(今村氏)
質問⑥:就職活動していた間は精神的な不安があったか?
就活中は何度も不採用となったが、それでも懲りずに応募した。楽天的であったことが良かったと思っている。(土井氏)
質問⑦:全く知らない場所に身を投じたときに何を拠り所に決断したのか?
2015-02-26_161820 (288x162).jpg何回か研究環境が変わったがすごく不安だった。これだったら誰にも負けないというものがあれば安心できるし、他人から認めて貰えることに繋がる。全部ができる人になる必要は無い。自分の強みを知り、それを伸ばせば、何処に行っても通用する人になることができる。(今村氏)
全く同意見で、好きなことや得意なことを伸ばせば、自分の中で一つの武器になる。また、一つの強力な武器を持つのではなく、2つ3つの武器を計画的に伸ばすことでも良い。(土井氏)

最後に、竹内副室長から講演者と出席者にお礼の言葉が述べられました。


2015-02-26_161820(3) (144x144).jpgお二人の講演には、コミュニケーションの大切さや様々な人脈を得たこと、そして自分の強みを活かすこと等が共通した内容として含まれていた。大学院に進む学生が少なくなっているが、もっと多くの人が大学院に進学して研究を続けて欲しい。

 


高度専門キャリア形成論は来年度も継続するので、この講義を通して人脈を広げ、将来を見据えて前に進んで欲しいと述べて、本日の講義が締め括られました。

以上

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