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HOME > 講義・ワークショップ > 講義・ワークショップ等の報告 > 第5回「高度専門キャリア形成論Ⅰ・Ⅱ」の講義報告です(H26年度)

講義・ワークショップ講義・ワークショップ等の報告

第5回「高度専門キャリア形成論Ⅰ・Ⅱ」の講義報告です(H26年度)

2014年07月15日

平成26年7月10日(木)、品川キャンパス白鷹館2F多目的スペースⅠで  平成26年度第5回高度専門キャリア形成論が開催されました。

  ~水産や海洋で活躍している博士研究者に聞く、学位取得者に期待されることとは~
『水産・海洋科学の最前線で働く』
 田中 智行 氏
 (株式会社マリン・ワーク・ジャパン 地球海洋科学部海洋化学課長)
 渡邊 一功 氏
 (一般社団法人漁業情報サービスセンター 事業2課長代理)
 

2014-07-10_162420 (144x144).jpg初めに、司会進行役の塩谷先生から、台風が接近しているにも関わらず、講義に出席していただいたことへのお礼が述べられました。
本日の講義は、「水産および海洋科学の最前線で活躍し、組織のリーダーでもある、40歳代の二人の博士に講演していただく」と説明がありました。

 

最初の講演者である株式会社マリン・ワーク・ジャパンの田中氏が登壇されました。

2014-07-10_162420(3) (144x144).jpg田中氏は、旧水産大を卒業後に名古屋大学で博士号を取得し、10年前に現在の会社に就職されました。
初めに、「今日は、私が考えるキャリアについて皆さんにお話ししたい」と述べて、スライドを使った説明が開始されました。




大学院生だった頃に、赤道に行く航海に参加したことが、学位論文を書くきっかけだった。そして、博士後期課程に進学したことで、就職の幅を狭めたという思いと同時に、『海に関わる仕事で研究職に就きたい』という職業観を持つようになった。

英語圏での生活と人脈

2014-07-10_162420(4) (256x144).jpg「最初の就職先は、地球観測フロンティア研究センターで、単年度契約のポスドクだった。しかし、そのお蔭で数か月後には、アラスカ大学で仕事に就く機会を得ることができた」と、大学院で経験した赤道域での研究が、北極海に適用することができた経緯が説明されました。

田中氏は、当時から『自分はこの分野でキーとなる研究者になろう』という強い思いがあったそうです。また、「このときに、英語圏での生活を経験し、人との付き合いの幅を広げることができた」と話されました。

ヤリガイのある仕事


4年後に日本に戻り、指導教員の紹介で、現在の会社に就職することになった。仕事は、将来性のある『ちきゅう』を立ち上げることであり、とてもヤリガイがあった。前職で鍛えた英語も役に立った。このときは、『世界で最も優れた海洋観測船にしてやろう』と意気込んでいた。全く違うサイエンスフィールドを知ることができる機会は、自分の中ではチャレンジであったが、仕事への満足度はとても高かった。大学卒業から現在までを振り返ると、5年ごとに大きな変化が起きていることが分かる。大学でやっていたことと、今やっていることはかなり違っているが、一貫して『海に関係する仕事』と『サイエンス』に関わって来たことに満足している。

 考えなければならいこと、いま必要なこと


『ちきゅう』は、かなり大きい掘削船で、深い所を掘ることができるのが特色だそうです。また、船内の研究区画は、柱状の長い試料を取り扱うことができる施設になっており、様々な研究機器が導入されていると紹介がありました。「船上でサイエンスサービスを提供するには、『おもてなしの精神、コミュニケーション力、チームワーク、英語力』が大事だ」と説明がありました。そして、これから就職を控えた受講者が、いま考えなければならないこととして、『将来を見通す力、教養を深めること、語学力』の3つを挙げられました。

最後に、「変化に対応できる人が、生き残っていける。皆さんはどう思いますか?」と質問を投げ掛けて講演を締め括られました。

【 質疑応答 】
質 問:仕事に必須である英語力は、どのようにして身に付けたか?
田中氏:英語に限らず、語学力が大事だということを言いたかった。外国に行かなくても、喋れるようになれると思う。

引き続いて、一般社団法人漁業情報サービスセンターの渡邊氏が登壇されました。

2014-07-10_162420(10) (144x144).jpg初めに、渡邊氏が「主な仕事は、漁船・漁業を対象としてサービスを提供すること。そこに博士がどう役立てるかを話し、少しでも皆さんの役に立てればと考えている」と述べられました。

同社が扱う様々な魚のなかで、渡邊氏は主にサンマを担当しているそうです。「サンマは、8月から12月の間に、水温の低下に従って、道東沿岸から徐々に南下する。しかし、昨年はなかなか南下しないために、漁場が沖合へと遠くなってしまった」とスライドを使って説明されました。

漁業情報を提供する仕事

2014-07-10_162420(12)  (256x144).jpg「サンマは、水温によって獲れる場所がずいぶん違い、その分布は資源状態によっても変化する。また、他の多獲性浮魚類も、同様に海況の影響を受け易い特徴がある。衛星や漁船や水揚げ等の情報を元に、日々大きく変化している海の分布図等を作成して、漁業者や流通加工業者に提供することが仕事だ」と業務内容の説明と共に、実際に漁業者や流通業者にどう役立っているのかについて説明がありました。

社会人になってから博士を取得


サンマの漁況予測には、海況予測と漁獲量予測が必要だ。しかし、漁獲量予測は様々な要因が影響していて困難だった。そこで、色々な先生に相談したところ、最終的には来遊資源量について研究することになった。修士を卒業して直ぐに、現在の会社に就職し、博士号は社会人になってから取得した。もともと、社会に出てから博士を取ろうと考えていた。

博士は一般常識も身に付けていると見られる


博士号を取得した人は、何でも知っているということに加えて、年齢に応じた一般常識があると見られることを覚悟した方が良い。入社直後に、『何も分かりません』は通用しないので、今のうちに勉強しておいた方が良い。学部卒で5年間働くと、それなりの力を付ける。博士は、世間知らずにならないようにしなければいけない。

社会に出る機会があれば、アルバイトでも良いからやった方が良い。現場を知ることが大事である。そうすれば、ビジネスマナーやルールが大体見えてくる。色々な人達と一緒に、上手くやりながら、仕事を進めていくのが現場だということを知る必要がある。様々な人達と話をすると人脈ができて、後でとても役に立つだろう。

最後に、「将来は、皆さんが業界をリードする立場になっていく。未来は自分たちで築き上げる気持ちで、真の力を付けて、大きく羽ばたいてほしい」と受講者への期待を述べて講演を締め括られました。

【 質疑応答 】
質 問:社会人として博士号を取得したいと思った理由は?
渡邊氏:学生の頃から、いつかはドクターを取るぞと思っていた。幸いにも、現在の会社では社会に出てから博士を取っている人がいる環境だった。後は、自分の意志次第だ。

続いて、受講者に代わって塩谷先生から、二人の講演者に質問がありました。

質問①:『キャリアは一人で作るものではない。人脈を作りながら重ねていくもの』とよく言われる。これに関して、実感した事例があれば紹介して欲しい?
2014-07-10_162420(16) (256x144).jpg渡邊氏:学生時代に、先生と研究会に出席して、たくさんの人達と知り合いになれたこと。そして、その人達が社会に出たときに相談に行ける。たとえ解決できなくても、どうすればいいかを教えてくれる。そういう経験が多かったと後から思っている。
田中氏:海洋学は、小さなコミュニティだ。仕事をする過程で出会った人達から、自分の知らない知識や新しいことをインプットしてもらえる。人脈は、そういう広がりがある。

塩谷先生からは、「プロになりたければプロに学ぶ。幸運を引き寄せるために、人脈を大いに活用してほしい」とコメントがありました。

質問②:これから社会に出る人達に、何かメッセージやアドバイスは?
田中氏:学校で勉強したことを、仕事で活かす場合もあれば、そうでない場合もある。新しい分野に行っても、果敢にチャレンジしてほしい。
渡邊氏:人には色々な可能性があり、生き方も変化している。分野を拡げながらも、頑張っていくぞと努力していくことが大事である。早く、私たちの場を脅かす存在になってほしい。

次回は、ワークショップとして9/18に開催予定です。

2014-07-10_162420(21) (144x144).jpg最後に竹内先生が、田中氏の『変化に対応する』や、渡邊氏の『現場を知ること』が印象的だったとの感想と共に、講演者の二人にお礼を述べられました。

また、次回のワークショップについて紹介がありました。
「次回の第6回目では、長期インターンシップの体験談と受入企業側の方の話が聞ける。また、懇談会も予定されている。色々な企業の方々と話し合える機会なので、是非参加してほしい」と述べて、本日の講義が締め括られました。

以上

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